メアリーシーコールの伝記を図書館から借りてきて、読了しました
わたしの感想はこうです
この人がクリミアに来たのは、英軍相手に商売するためです
この人は商売人です
よく言えばビジネスウーマン、悪く言えば山師です
この人をどうしても好きになれないのは、医師兼看護師と”自称”していることです
いかがわしい薬(たとえば塩化水銀)などを処方したり(一種の民間療法です)、兵士の傷を少し手当てしてやった程度で、どうして医師兼看護師を自称できるのでしょうか?ジャマイカあるいはイギリスの公的資格・ライセンスを持っていますか?あるいはそれに匹敵するような継続的・包括的な修練の実績がありますか?
この方はスクタリのバラック病院などで兵士の看護をする気持ちは当初からさらさらありませんでした
パナマで長い間ホテルを家族と共に経営しており、ノウハウを熟知していました
また商売柄、広い人脈を持っていました
クリミア戦争勃発のニュースを聞くと、ビジネスチャンス到来とクリミアに渡ったのです
軍を相手にする商売は儲かることをよく知ってました
そしてバラクラバとセバストポリの中間地点に、1エーカー(63m×63m程度の広さ)の宿屋兼雑貨屋を建て、商売を始めます 今でいえば、ビジネスホテル兼コンビニです 食堂(レストラン)も付いてます
この人はしたたかな商売人です ときどき兵士*に対し民間療法サービスや看護サービスもします
(*主に高位の軍人、将校らと思われる)
商売でやってきたのに、兵士を救うためと繰り返し述べている所が”イカサマ師”です
そして将校らの称賛する言葉を自伝に多数載せています 今でいえば”口コミ”の効果をよく知っていたと言えるでしょう
この人の自伝を読んでいると、アメリカの西部劇に出てくるバーを思い出します
そのバーのマダムがメアリーシーコールです
喧嘩があろうが撃ち合いがあろうが、この人に怖いものはありません
度胸があり、外交的な性格で客の心をとらえるのもうまく、人気のあるマダムだったでしょう
客とどんちゃん騒ぎをするのも好きだったようですね*
従業員の扱いもうまかったようです ベテランのマネージャーです
*ホテルでは宴会・舞踏会・演劇・競馬会が頻繁に開催されていた
この人は優れた商売人*であったかもしれませんが、医師でもなく看護師**でもありません
それがわたしの結論です
*戦争が終わったら倒産してますから、ビジネスの成功者とは言えないでしょう
**もともとナイチンゲールとは無関係の人です