飛沫と飛沫核の理論

2020.3.7より開始

2020.3.18 室内環境のエアロゾル−その挙動と換気 日本エアロゾル学会

日本エアアロゾル学会のレポートです。まだ医療現場に即した詳細な報告はないようです。しかし大変興味深いです(向野)

ガス分子は混ざりやすい(拡散しやすい)ですが,エアロゾル粒子の中でも室内にも多く存在する大きさが 1,000 分の1mm(1μm)程度の微小なエアロゾル粒子はガス分子に比べればほとんど拡散しません。さらに、目に見える粗大な粒子とは異なり,その沈降速度も非常に小さく,空間中に長く浮遊しています。この微小なエアロゾル粒子を室内から追い出すには, 空気の流れ(気流)により移動させ,排出(換気)または空気清浄機により除去することが必要です。

エアロゾル:ミクロとマクロの出会うところ 東京農工大学農学部 原宏

何か別の世界が広がっています(向野2020.3.17)

・・この粒子と空気のランダムな混合系をエアロゾル、aerosol という。水ならぬ 空気が粒子を「溶かしている」として solution。空気のという語、aero-をつけると aero solution。 この solution の語の後半を略して「sol」としたものが、aerosol である。 これから分かるようにエアロゾルは粒子と空気がセットになった概念であるが、エアロゾル状態になっている粒子を表すときも「エアロゾル」といわれる(aerosol)。
インフルエンザなどで知られるウイルスの大きさは 0.02-0.2μm程度である。これが空気中 に浮遊していると当然ブラウン運動をする。ウイルスの粒径を 0.02 μm とすると 1 sec に対す る変位は 140 μm、つまり 0.14 mm となる。これだけの変位であれば最近のマスクなら捕捉 することが可能であろう。細菌の大きさは 0.5-10μm程度であるので、空気中に浮遊する細菌 に比べるとウイルスははるかに捕捉しやすいことがわかる。
エアロゾル、それはミクロとマクロが出会うところ。その科学は美しい。そして、それだけわくわくして、楽しくなってくる。

1996 病院における隔離予防策のためのCGC最新ガイドライン(メディカ出版)

飛沫感染:飛沫は空中に浮遊し続けることはない
空気感染:空気の流れによって広くまき散らされ、同室内の、・・・患者に吸入される。

2019.3「高齢者介護施設における感染対策マニュアル改訂版(2019年3月)」

高齢者施設と感染対策の部分からです。飛沫と飛沫核の古典的な定義が記載されています。

2018.11.27インフルエンザの不顕性感染者が感染源となる頻度

患者の約30~50%では,発症3日以内であれば静かに呼吸した呼気中のエアロゾルにもRNAウイルスが発見されることがある。ここではウイルスの高排出者から排出されるエアロゾルの約90%は径が1μm以下の飛沫核で,呼気時間1分当たり,少なくとも3~20個のウイルスに相当するRNAが排出されると報告されている。
インフルエンザ患者からエアロゾルを介した空気感染により感受性者にウイルスが伝播することは可能と考えられる。ただし,不顕性感染者からの感染の成立に関しては,呼気により排出された少量のウイルスがいつまで空気中で活性を保っていられるのかという点も考える必要がある。

高橋和郎 (大阪府立公衆衛生研究所副所長・感染症部長)
日本医事新報 No.4715 (2014年09月06日発行) P.66

Transmission routes of respiratory viruses among humans

エアロゾルは空中を長く漂うと書いてます。飛沫核と同じ扱いですね。

Aerosols have a slow settling velocity(沈降速度), thus they remain suspended in the air longer and can travel further

Current Opinion in Virology Volume 28, February 2018, Pages 142-151

Natural Ventilation for Infection Control in Health-Care Settings.

Wellsの古い論文の引用ですが、飛沫は数秒で飛沫核に転化すると書いてあります。床に落ちる前に。これは重要な指摘です。

Wells found that, under normal air conditions, droplets smaller than 100 μm in diameter would completely dry out before falling approximately 2 m to the ground. This finding allowed the establishment of the theory of droplets and droplet nuclei transmission depending on the size of the infected droplet. The Wells evaporation-falling curve of droplets (see Figure C.2) is important in understanding airborne transmission and transmission by large droplets. Wells' study also demonstrated that droplets could transform into droplet nuclei by evaporation.

飛沫の定義も書いてあります。

Currently, the term droplet is often taken to refer to droplets >5 μm in diameter that fall rapidly to the ground under gravity, and therefore are transmitted only over a limited distance (e.g. <1 m). In contrast, the term droplet nuclei refers to droplets <5 μm in diameter that can remain suspended in air for significant periods of time, allowing them to be transmitted over distances >1 m

Principles of Virology, Volume 2: Pathogenesis and Control

小さな飛沫(直径l to 4 μm)はいつまでも空中に漂うかもと書いてます。

As noted when we discussed viral entrvy, the size of a droplet affects its “hang time": large droplets fall to the ground, but smaller droplets (l to 4 μm in diameter)may remain suspended in the air indefinitely.