腎不全時のバンコマイシンの投与量決定

 

バンコマイシン(VCM)はグリコペプチド系抗生物質で、種々のMRSA感染症(敗血症、感染性心内膜炎、骨髄炎、関節炎、熱傷手術創等の表在性二次感染、肺炎、肺化膿症、膿胸、腹膜炎、髄膜炎)に適応を有する。

本剤の主な副作用として、腎障害、聴覚障害、red neck症候群等があるが、これらの副作用は投与方法や血中濃度と関係することが明らかになっている。

特にVCMは腎排泄型の抗生剤なので、腎障害患者は要注意である。


VCMの適正濃度は点滴終了1〜2時間後25〜40μg/mlを超えず、最低血中濃度(トラフ値)10 μg/mlを超えないことが望ましい。

点滴終了1〜2時間後濃度が60〜80μ g/ml以上、トラフ値が30μg/ml以上持続すると副作用の発現する可能性が高くなる。


腎機能低下患者の場合、健常成人に比べて VCMの血中濃度が蓄積傾向にあるため、投与量 の修正が必要である。

Matzkeら 1) によるノモグラムを使って、クレアチニンクリアランスからVCMの投与間隔を設定する(図1)。

このノモグラムの場合は初期投与量 25mg/kg、次いで19mg/kgをノモグラムに示す投与間隔で投与する。

クレアチニンクリアランスの測定ができない時は、血清クレアチニンからクレアチニンクリアランスを予測して表1(安田の式)2)により計算する。

表2のVCM投与量 の早見表3)を使ってもよい。

続いて、その初期設定が適当かどうか判定するためTDM(therapeutic drug monoitorintg)を実施する。

VCMのTDMは保険で認められている。

検体の採取方法は血液を第一回投与の点滴終了の1〜2時間後と次回投与前(トラフ値)の二回採取する。

次いでその投与量 で適切かどうか確認するために3〜5回目の点滴開始前30分以内(トラフ値)とその投与回の点滴終了1〜2時間後の2回採血する。

投与を変更した場合も3〜5回目の点滴開始前30分以内(トラフ値)とその投与回の点滴終了1〜2時間後の2回採取する。

測定検体は血清または血漿として0.3mlくらいで凍結保存する。

 

表1 予測クレアチニンクリアランス

男性

 

  [176-年齢(歳)]×体重(kg)

    ------------------------------       

100×血清クレアチニン値(mg/dl)

 

女性

 

 [158-年齢(歳)×体重(kg)

--------------------------------------

100×血清クレアチニン値(mg/dl)

 

 

表2 VCM投与量の早見表

Ccr(ml/分)

投与量(mg/日)

100
90
80
70
60
50
40
30
20
10

1.545
1.390
1.235
1.080
925
770
620
465
310
155

 

【文献】

1)Matake, G.R, et al: Antimicrob. Agents Chemother., 25(4) : 433, 1984.
2)安田兵衛:医学と生物学, 101(2) : 83, 1980.
3)Moellering, R. C., et al : Ann. Intern. Med., 94(3) : 343, 1981.


(福岡大学第一内科 向野賢治、日本医事新報収載)