ヘルペスウイルス感染症  内科的ウイルス感染症の代表

ヘルペスherpes (ラテン)とは小水疱・小膿疱の集簇した状態である疱疹(ホウシン)のことである。
ヘルペスウイルスは、DNA ウイルスである二本鎖DNAのゲノムと、正20面体のカプシド、宿主細胞核膜由来のエンベロープを持つ。(右図参照)

人に病原性を示す代表的なものは5つあり、@単純ヘルペスウイルス、A水痘・帯状疱疹ウイルス、BEB ウイルス、Cサイトメガロウイルス、Dヒトヘルペスウイルス6型がそれである。(→各論で述べる)

ヘルペスウイルス科のウイルスのほとんどは、人体(宿主)に初感染の後、潜伏感染する。これは、いわば冬眠状態みたいなものである。やがて、潜伏感染したヘルペスウイルスは、宿主が免疫不全に陥ることで、再び目覚め(再活性化)病的状態を来す。これを回帰発症recurrenceという。(重要事項)
換言すると、初感染はウイルスを持っている宿主・環境からの外因性感染(水平感染・垂直感染)であり、回帰発症は自分自身の中からの内因性感染である。

具体例として、「水痘」と「帯状疱疹」の関係が挙げられる。この二つは、共にヘルペスウイルス科に属する水痘帯状疱疹ウイルスvaricella zoster virusによって生じる発疹性の疾患だが、同じウイルスによる違う時期に現れる病気の呼び名である。つまり、初感染で全身に水疱が出現するのが「水痘」(いわゆる水ぼうそう。好発時期は幼児・学童期)。そのウイルスの中で、神経節に潜伏して生体の老化・免疫低下によって回帰発症し、知覚神経に沿っての移動の後に知覚神経支配領域(皮膚デルマトームに相当)に多くの場合、片側性の有痛性水疱を形成したのが「帯状疱疹」

いったん潜伏したヘルペスウイルスは、宿主と生涯を共にする。ところで、回帰発症により皮膚や粘膜に生じる病変部に存在するウイルスは宿主の免疫反応により排除されるが(つまり免疫反応がはたらく。これは免疫グロブリンの中でもIgG,IgMが血中で上昇することで観測される)、神経節に潜むウイルスゲノムは排除されない(免疫反応がはたらかない)。

回帰発症を引き起こす「再活性化への刺激」には日光(とくに紫外線)、外傷、ストレス、疲労、月経、発熱、神経に対する外科的侵襲、免疫抑制剤(ステロイド・シクロスポリンなど)がある。

★一般にウイルス感染に伴い一過性の免疫不全をもたらす場合が少なくないが、ヘルペスウイルスの初感染においても一過性の免疫抑制が生じる。

★一部のヘルペスウイルスには発癌性がある。

 

ヘルペスウイルス−まとめ

名称
略称
正式名称
初感染
回帰発症
癌化
単純ヘルペスウイルス1型
HSV-1
HHV-1

歯肉炎、角膜炎、咽頭炎
小児の脳炎

口唇ヘルペス、ヘルペス脳炎

単純ヘルペスウイルス2型
HSV-2
HHV-2
外陰膣炎
性器ヘルペス
子宮頚癌?
水痘帯状疱疹ウイルス
VZV
HHV-3
水痘
帯状疱疹
Epstein-Barrウイルス
EBV
HHV-4

伝染性単核症
慢性活動性EBV感染症

VAHS?
バーキットリンパ腫
上咽頭癌
サイトメガロウイルス
CMV
HHV-5
CMV単核症

CMV肺炎
口腔内毛状白斑症

前立腺癌?
ヒトヘルペスウイルス6型
HHV-6

突発性発疹
壊死性リンパ節炎

ヒトヘルペスウイルス7型
HHV-7
突発性発疹
ヒトヘルペスウイルス8型
HHV-8
カポジ肉腫