コロナ空気感染を支持する10の科学的理由

www.thelancet.com Vol 397 May 1, 2021

2021.9.30

Ten scientific reasons in support of airborne transmission of SARS-CoV-2より

①大量拡散のイベント(superspreading events)がコロナ伝播の主要因

大量拡散のイベント(superspreading events)がコロナ伝播の主要因になっている。このようなイベントがパンデミックの一番の推進力である。合唱コンサート、クルーズ船、屠殺場、老人ホーム、矯正施設などについて、人の行動・交流、部屋のサイズ、換気などの因子を詳細に分析した結果、長距離伝播と基本再生産数(R0)の過分散(overdispertion)が明らかになった。これらはSARS-CoV-2の空気感染を意味し、飛沫や接触感染によっては適切に説明することができない。
(註)わが国でもダイヤモンドプリンセス号、屋形船、キャバクラ・ホストクラブ・スナックなど、屋内で、人が多く、換気が悪い場での事例(クラスター)が多いことからも、明らかである。

②ホテルで隣同士の人が会わないのに感染

adjacent.gif検疫のためのホテルの隣同士の部屋に隔離収容された2組の入居者。1人(感染者C)に部屋のドア口でPCR検査が実施され、ドアは閉められたが、そのすぐ後に隣の親子(非感染者D,E)に対し、やはり部屋のドア口でPCR検査が実施された。そのとき換気の悪い廊下に残っていたエアロゾルを吸入して感染したと考えられる。(文献)

③無症状者による感染が多い

咳やくしゃみのない人からの無症状あるいは発症前感染は、世界的に全感染伝播の少なくとも1/3、おそらく最高59%を占める。これはSARS-CoV-2が世界中に広がった、鍵となる感染経路であり、主要な感染経路が空気感染であることをを支持している。会話中に数千ものエアロゾル粒子が産生されるが、大飛沫粒子はごくわずかである。このことも空気感染経路を支持している。

④インドア(屋内)の感染が多い

SARS-CoV-2の感染はアウトドア(屋外)よりもインドア(屋内)で多い。屋内の換気で感染は大幅に減少する。これらのことは空気感染が主要な感染経路であることを支持する所見である。

⑤院内感染が多いのは空気感染対策がとられてないため

院内感染が医療施設で報告されている。そこでは厳重な接触・飛沫感染対策がとられているが、マスクはエアロゾル用ではなく、飛沫用である。
(註)病院では通常サージカルマスクで、エアロゾル発生手技(気管吸引や気管内挿管)のときのみ、N95マスクが推奨されている。

⑥SARS-CoV-2は空中から検出される

生きたSARS-CoV-2が空中で検出されている。実験では、SARS-CoV-2は空中で3時間感染性を維持し、半減期は1.1時間である。生きたSARS-CoV-2は、エアロゾル発生手技をしてない病室や感染者の車の空気中からも検出された。

麻疹ウイルスや結核菌はまだ空中から分離培養されたことがない。

⑦SARS-CoV-2は病院のエアフィルターから検出されている

SARS-CoV-2は病院のエアフィルターや建物内のダクト(配管)から検出されている。飛沫はそのような場所には届かない。

⑧動物実験でも空気感染を証明

ferret.gifケージ(かご)にSARS-CoV-2を感染させた動物(フェレット)を入れ、別のケージに感染していない動物を入れる。ケージをダクトでつなぎ、感染動物から非感染動物への空気の流れを作ったところ、非感染動物にSARS-CoV-2が感染した。SARS-CoV-2の空気感染が明らかになった。


⑨空気感染説に反論する強力なエビデンスはない

感染者と同じ空間にいて感染しなかった人もいるかもしれないが、感染の成立には感染者の吐き出すウイルス量、換気の強さの程度などいろいろな因子の影響を受けるので、一概に否定はできない。

⑩飛沫・接触感染が主要な感染経路であることを明らかにした論文はない

接近した距離で感染したことが、空気感染の否定にはならない。エアロゾルは近距離ほど、濃度が高いからである。