CDC最新情報:豚インフルエンザA(H1N1)感染症---カリフォルニアとテキサス、2009年4月

原文 word(和訳)

4月21日、CDCは、南カリフォルニアにおける小児発熱性呼吸器疾患の最近の2症例が遺伝子的に類似している豚インフルエンザA(H1N1)ウイルスによって引き起こされていたことを報告した。このウイルスは、これまで合衆国やその他の場所で豚あるいはヒトインフルエンザでは報告されたことのなかった遺伝子断片のユニークな結合を含んでいた(1)。どの小児も豚との接触はなく、したがってヒトヒト感染が起きたことが危惧されることになった。季節性インフルエンザワクチンH1N1株は感染防御を提供しそうにないと考えられている。この報告は進行中の調査状況を更新するものであり、以前の症例で同定されている豚インフルエンザA(H1N1株)と同じ株に感染した6名の追加患者に関する予備的な詳細情報を提供するものである(4月24日現在)。追加の6症例は、カルフォルニア州サンディエゴ郡(3症例)、カルフォルニア州インペリアル郡(1症例)、テキサス州グアダループ郡(2症例)から報告された。CDC,カルフォルニア公衆衛生局、テキサス厚生局は、症例調査、8症例についての接触者検診、ウイルス伝播の範囲を知るための強化サベイランスを実施している。CDCは「タイピングできていないすべてのインフルエンザAウイルスをすぐに検査のためCDCへ郵送するように」との勧告を継続している。加えて、CDCによって、合衆国の患者のウイルスと同じ株の豚インフルエンザA(H1N1)ウイルスがメキシコの患者の検体から確認された。医師は下記の発熱性呼吸器疾患患者の鑑別診断に季節性インフルエンザと同様に豚インフルエンザも考慮すべきである。
1) カルフォルニア州サンディエゴ郡、インペリアル郡、テキサス州グアダループ郡に住んでいるか、そこに旅行した人。
2) 最近メキシコに旅行した人。あるいは「発熱性呼吸器疾患があり、発症前7日間の間に合衆国の3州の一つかメキシコにいた患者」に接触した人。

症例報告

カルフォルニア州サンディエゴ郡

4月9日、16歳の少女とその父(54歳)が、急性呼吸器疾患のためサンディエゴ郡診療所を受診した。少女は4月5日に発症した。症状は、発熱、咳、頭痛、鼻水だった。父は、4月6日発熱、咳、鼻水で発症した。二人とも自然治癒した。父は2008年10月に季節性インフルエンザワクチンの接種を受けていたが、娘は受けていなかった。二人から呼吸器検体が得られ、サンディエゴ郡衛生局研究所(laboratory)で検査され、RT-PCR法でインフルエンザA陽性が明らかになった。しかしそれ以上のタイピングはできなかった。患者家族の2人の接触者から軽度の急性呼吸器症状が報告されている。これらの家族から検体が採取されている。もう一つの症例、サンディエゴ郡に住んでいる小児、が4月24日に報告されている。この症例に関する疫学的な詳細はまだわかっていない。

カルフォルニア州インペリアル郡

4月12日、インペリアル郡在住の自己免疫疾患を持つ41歳の女性が、発熱、頭痛、咽頭痛、下痢、嘔吐、筋肉痛を発症した。4月15日入院。彼女は回復し、4月22日退院となった。4月16日に得られた呼吸器検体が、サンディエゴ郡衛生局研究所で検査され、RT-PCR法でインフルエンザA陽性となった。しかしそれ以上のタイピングはできなかった。彼女は今回、季節性インフルエンザワクチン接種は受けていなかった。3人の家族接触者から呼吸器症状の報告はない。

テキサス州グアダループ郡

サンアントニオに近いグアダループ郡在住の16歳の二人の少年が、4月15日インフルエンザの検査を受け、インフルエンザA陽性であった。二人はそれぞれ4月10日と14日に急性呼吸器症状で発症し、4月15日クリニックを受診した。彼らの接触者検診は現在進行中である。

新規症例のうち5人が、インフルエンザの疑いで診察を受けた医療施設からの検体から同定された。6症例の詳細情報はまだ明らかになっていない。陽性検体は精査のために3郡におけるルーチンのインフルエンザ・サベイランスの一環として、公衆衛生研究所に郵送された。

メキシコにおける流行

メキシコの公衆衛生当局は、ここ最近の、重症肺炎例、死亡例を含む呼吸器疾患患者数の増大を報告した。ほとんどの報告症例、流行は中央メキシコよりなされたが、流行と重症肺炎はまたアメリカとメキシコ国境線沿いの州から報告された。メキシコの呼吸器疾患患者から集められた検体の検査は、CDCの研究所において合衆国症例で同定された豚インフルエンザA(H1N1)と同じ株であることが確認された。しかしながら、メキシコにおける患者の増加と、少ない検体からの豚インフルエンザ同定との関連性を評価するだけの明らかなデータは今のところない。CDCは追加的な検体検査や疫学的援助の提供において、メキシコの公衆衛生当局を支援している。合衆国の患者は、誰も発症7日以内にメキシコに旅行していない。

疫学調査および検査

4月24日の時点で、新規症例で判明した疫学的関連性は1)サンディエゴ郡の父娘の家族、および、2)グアダループ郡の2人の少年が行っていた学校、を含んでいた。4月24日の時点で、テキサスの症例とカルフォルニアの症例の間に疫学的関連性は認められなかった。また、カルフォルニアの3新規症例と以前の報告例との間にも認められなかった。最近の豚への曝露は、7人の患者の誰にも認められなかった。ヒトヒト感染が起きたかどうかを明らかにするために、すべての患者の濃厚接触が調査された。

追加症例の強化サベイランスは、カルフォルニアとテキサスで行われている。医師は、発熱性呼吸器疾患のために受診した患者にインフルエンザ検査をするよう勧告されている。陽性検体は精査のために公衆衛生研究所public health laboratoryに郵送すべきである。季節性インフルエンザの活動性は、テキサスとカルフォルニアをふくむ合衆国では低下し続けているが、両州におけるインフルエンザ様疾患の原因は残っている。

編集者より:

合衆国では2007年以降、豚インフルエンザA(H1N1)を含む新規のインフルエンザAウイルス感染症は、全国的に届け出すべきものとなっている。最近のパンデミックインフルエンザ準備活動は、インフルエンザのRT-PCRを実施したり、ルーチンサベイランスで受け取ったり、インフルエンザAウイルスのタイピングをしたりする、合衆国の公衆衛生研究所の能力を大きく向上させ、そして新規のインフルエンザウイルス感染症を検出する、合衆国の研究所の能力を強化した。進行中の調査に記載された症例の前は、CDCに報告された人の豚インフルエンザの最近の症例は、豚に暴露した人か、豚に暴露した家族に接触した人で起こっていた。豚インフルエンザの、豚への曝露を介さない、ヒトヒト感染はこれまで報告はされてきたが、その伝播は限定的だった(2,3)。今回の症例で、どの患者も豚への曝露の明らかな病歴がないことは、彼らが他の感染患者との接触によって罹患したことを示唆している。

今回の症例の疾患の全体像は、まだ完全には明らかになっていない。これまでに判明した8症例のうち、6症例は自然治癒疾患self-limited illnessで、外来で治療された。一人の患者は入院した。以前の豚インフルエンザ報告は、今回の症例で検出されたものとは異なる株によるものではあるが、ほとんどが軽度の上気道疾患であった。しかし、重症下気道感染、死亡もまた報告されていた(2,3)。

豚インフルエンザウイルス株の伝播範囲は今回の調査では不明である。以前報告された二人の患者(10歳の少年と9歳の少女)に対するカルフォルニアとテキサスの当局による進行中の調査では、かれらが感染性であったと考えられる期間(発症前1日から発症後7日までと定義される)に、彼らと濃厚接触した人の特定を行っている。これらの濃厚接触者には、同居の家族や、より広範な家族、子供をケアした医療スタッフ、4月3日にテキサスに旅行した時に、少年と濃厚接触があった者を含んでいる。呼吸器検体は、現在症状があることが判明している接触者から集められている。さらに、可能性症例に対する強化サベイランスが、患者が住んでいる地域のクリニックや病院で実施されている。同様の調査と強化サベイランスが、追加の6症例についても実施されている。

医師は次の発熱性呼吸器疾患患者の鑑別診断に豚インフルエンザも考慮すべきである。(1)カルフォルニア州サンディエゴ郡、インペリアル郡、テキサス州グアダループ郡に住んでいるか、そこに旅行した人。(2)最近メキシコに旅行した人。あるいは「発熱性呼吸器疾患があり、発症前7日間の間に合衆国の3州の一つかメキシコにいた患者」に接触した人。
合衆国のどこか他の場所での発熱性呼吸器疾患のいかなる異常集団発生も調査すべきである。

診断基準に合致する患者はインフルエンザの検査をされるべきである。インフルエンザ陽性検体は更なる精査のために公衆衛生研究所に郵送されるべきである。人の豚インフルエンザ感染を疑う医師は、患者から鼻咽頭スワブを取り、そのスワブをウイルス輸送培地に入れ、冷蔵保存して、州公衆衛生研究所への移送とタイムリーな診断を促進するために、州または地域の衛生局に連絡するべきである。CDCは州公衆衛生研究所に対し、タイピングできない全てのインフルエンザA検体を迅速にCDC、インフルエンザ部門、インフルエンザ・サベイランス・診断支部研究所に輸送することを要請する。予防的ステップとして、CDCは他のパートナーと一緒に、今回の人の豚インフルエンザウイルスに特異的なワクチン種株seed strainの開発に取り組んでいる。

いつものように、発熱性呼吸器疾患の人は市中の人々への感染症(インフルエンザやその他の呼吸器疾患など)の伝播を避けるために、職場や学校を離れて家に留まるべきである。さらに、手洗いの励行は呼吸器疾患の伝播を減少させることができる(5)。豚インフルエンザに対する感染対策、治療、予防内服に関する暫定ガイドラインhttp://www.cdc.gov/flu/swine/recommendations.htmで見ることができる。
豚インフルエンザの追加情報は、http://www.cdc.gov/flu/swine/index.htmで見ることができる。

参考文献

1. CDC. Swine influenza A (H1N1) infection in two children---Southern California, March--April 2009. MMWR 2009;58:400--2.
2. Myers KP, Olsen CW, Gray GC. Cases of swine influenza in humans: a review of the literature. Clin Infect Dis 2007;44:1084--8.
3. Wells DL, Hopfensperger DJ, Arden NH, et al. Swine influenza virus infections. Transmission from ill pigs to humans at a Wisconsin agricultural fair and subsequent probable person-to-person transmission. JAMA 1991;265:478--81.
4. Newman AP, Reisdorf E, Beinemann J, et al. Human case of swine influenza A (H1N1) triple reassortant virus infection, Wisconsin. Emerg Infect Dis 2008;14:1470--2.
5. Ryan MA, Christian RS, Wohlrabe J. Handwashing and respiratory illness among young adults in military training. Am J Prev Med 2001;21:79--83.

訳者註:surveillanceはサーベイランスと書かず、発音どおりサベイランスと書いています。こだわり(笑)