COVID-19における抗ウイルス薬早期投与の医学的根拠

2021.6.4

2020.6.16 Respiratory Virus Infections:Understanding COVID-19. Immunity

COVID-19の臨床経過。COVID-19は3つの段階phase、すなわち前症候期pre-symptomtic phase、症候期symptomatic phase、回復期recovery phaseに分けられる。ウイルス増殖(viral replication)は前症候期の後期~症候期の早期に起こる。その後にマクロファージ、ナチュラルキラー(NK)細胞、樹状細胞、炎症性サイトカインなどの自然免疫反応(innate immune response)が起る。重症例(severe disease)では、自然免疫反応は増強され、上昇し続けてして、組織障害を引き起こす。抗s原特異的なBおよびT細胞による細胞性免疫反応は、軽症~中等症のCOVID-19では感染1週間以内に検出される。図の下段に、ウイルスと免疫の動態を基にした、可能な介入の適切なタイミングを示した。免疫調節薬(immunomodulator)は遺伝子組み換えによるもの、あるいは免疫系の特異的な部分を標的にした蛋白である。

2020.10 Mild or Moderate Covid-19  N Engl J Med 2020

この論文においても、asymptomaticあるいはpresymptomaticの時期に(ウイルスの増殖期に)抗ウイルス剤を使用すること(antiviral therapy)を示している。

*下記は「COVID-19における抗ウイルス薬早期投与の医学的根拠」を示したものではなく、わが国の抗ウイルス薬のガイドラインのいい加減さを示すために記載した。

2021.5.26 新型コロナウイルス感染症(19-COVID) 診療の手引き・第5版 34page

わが国に流布している診療の手引きでは、抗ウイルス剤の投与は中等症Ⅰからである。これはレムデシビルを念頭に置いたものであり、ファビピラビルやイベルメクチンは考慮されていない。眼中にないと言ったところか。
中等症Ⅰとは、肺炎、呼吸困難はあるが、酸素飽和度は93~96%の状態ものを指す。通常発症してから数日経っており、抗ウイルス剤投与は遅れている状態である。この状態で抗ウイルス剤を投与しても、効果が薄いと考えられる。

2021.2.1 COVID-19に対する薬物治療の考え方 第7版 日本感染症学会

日本感染症学会は軽症時からの抗ウイルス剤投与を1ページでは図とともに「発症早期には抗ウイルス薬が重要となる」としているが、本文2ページでは従来通り「無症状者では薬物治療は推奨しない」としている。きわめて矛盾した記述である。
第6版では「無症状者や低酸素血症を伴わない軽症者では薬物治療は推奨しない」としていた。やはり軽症者の治療を推奨しないのはまずいと考えたのだろう。