咳・くしゃみの放物線落下する大飛沫による感染の非現実性

西村秀一先生 新型コロナ「正しく恐れる」より

人が落下飛沫を吸い込むには、掃除機並みの吸引力が必要

 

重力落下する飛沫で感染するという説もありますが、口から出てすぐに下に落ちるよう な飛沫で感染する可能性なんてほとんどないと思います。0.数秒で下に落ちる飛沫をど うやって吸い込むんですか。人間の鼻の穴は下を向いています。それが呼吸器に吸い込ま れるためには、掃除機並みの超人的吸引が必要です。口からも鼻からも吸い込みでは同じ です。たまたま口があいたときにタイミングよく飛沫が入ってくるか、目の前でふっかけ られないかぎりあり得ません。空気感染しか広がりようがない。(図の下にこの項の前文を記す)

「空気感染」は厄介です。このウイルスに対しては誰も免疫を持っていませんでした。 そのため呼吸器系に直接入ると、極めて少量のウイルスでも感染してしまう。人は空気を 吸うことは止められませんから、感染の可能性は高くなります。厄介ですが、その感染の 仕組みがわかればそれなりに対策を立てることはできます。
 インフルエンザの話をしますと、「飛沫感染」と「接触感染」と言われていますが、こ れも「空気感染」です。感染管理の専門家だという人たちは、なにかと接触感染にしたがりますが、そんなことはない。3密(密閉空間、密集場所、密接場面)の状態になれば、 インフルエンザも空気感染します。インフルエンザで飯を食っている本当の専門家ならほ とんどがそう思っているはずです。
 重力落下する飛沫で感染するという説もありますが、口から出てすぐに下に落ちるよう な飛沫で感染する可能性なんてほとんどないと思います。0.数秒で下に落ちる飛沫をど うやって吸い込むんですか。人間の鼻の穴は下を向いています。それが呼吸器に吸い込ま れるためには、掃除機並みの超人的吸引が必要です。口からも鼻からも吸い込みでは同じ です。たまたま口があいたときにタイミングよく飛沫が入ってくるか、目の前でふっかけ られないかぎりあり得ません。空気感染しか広がりようがない。
 では通常の季節性インフ ルエンザが、コロナのように爆発的に広がらないのはなぜかというと、みんながある程度 免疫を持っているからです。過去にインフルエンザに感染した人は、何らかの免疫を持っ ていて感染しにくい。免疫を持っている人が感染するにはある程度のウイルスの量が必要 です。例外は子供だちと新型のインフルエンザです。
 今回のコロナは、みんなが免疫を持ってないから、量が少なくても感染してしまう。イ ンフルエンザだって、免疫を持ってない人で実験した論文があるのですが、ウイルスが数 個レベルで感染する。インフルエンザはいったん流行すると、麻疹や水痘、結核と違って 患者が広範囲に広がるので、どこで感染したのかわかりにくいことも、空気感染の証明を 難しくしている大きな理由のひとつです。
 二〇〇九年の新型インフルエンザのときは、空気感染が見られました。免疫を持ってい る人がいませんから。今度のコロナでも新型インフルのときと同じ状況が起きるな、と思っ ていました。
各地の病院で院内感染の発生がニュースになっています。反省の弁として、 手洗いが不十分だったとか、パソコンのキーボードをケアするのを忘れていたとか、そん な話がまことしやかに出ていますが、そういうことではありません。服を着替えるときに 髪の毛を触った、などという話は想像の域を出ていませんし、そんな「耳なし芳一」の耳 のようなことだけで感染が大きく広がるわけがありません。患者のいる場所で同じ空気を 吸っていたからです。

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